アントワーヌ・プレジウソ氏 来日

 皆さんは、独立時計師という言葉を知っているだろうか?ブランドやメーカーに属さず、時計を製造している時計師のことだ。
多くの時計会社は資本を得るために株を発行し、株主への配当を考えるために売れる商品を作る。豊富な資金力は、製造力と宣伝力を武器に世界中で商品を販売することが出来る。それに対し、殆どが個人で経営している独立時計師は、自分の技術力を武器に少量生産だが、自分の作りたいものを作る。
企業に比べれば生産数も少なく、その為に価格も高くなる。しかしその時計師の個性が存分に生かされた時計が誕生するのだ!言うなれば自分の分身や子供とまで言う人がいる。

そんな独立時計師の1人アントワーヌ・プレジウソ氏とそのご子息が来日しているという事で、早速、会いに行った。

アントワーヌ氏は、1978年に時計学校を主席で卒業したそうだが、100年に1人の天才だったそうだ。そして運命のいたずらか同級生には同じく100年に1人の天才がもう1人いたそうだ。それが今年、創立25周年を迎えたフランクミュラー氏だ。

アントワーヌ氏は卒業後、パテック・フィリップに入社し、その後アンティコルムにて歴史的作品の修理を行っていたという。
1993年に工房を開設し、1995年には独立時計師集団アカデミー(AHCI)に参加することになる。AHCIは1995年設立なので、設立当初からのメンバーという事になる。

さて話を現在に戻して、プレジウソ親子は聞けば親日家だという。特に日本食が大好きで、日本に来ることをいつも楽しみにしているそうだ。今回イベントのために来日したそうだが、その1つである銀座で独立時計師の時計を扱うステラ・ポラーレへ来訪したのだ。




そして時計がこちら。
懐中時計トゥールビヨン、腕時計トゥールヨン、そしてスクエアーのミニッツ・リピーター






特に気になったのはこれ。

 チタンケースに18Kのムーブメント。そこへダイヤモンドをセッティングしてある。

 驚愕する恐ろしくバランスのとれたデザインである。チタンの落ち着いた雰囲気に18Kとダイヤモンドの煌びやかさ。ケースサイドにもゴールドの台座にダイヤモンドをセッティングしています。勿論すべてが手作業によるセッティングと組立。
 チタンのため大きさの割には軽く、装着感は大変良好です。またサイドのダイヤセッティングも素晴らしく(写真を撮り忘れました・・・)、留めている爪による衣類の引っ掛かりは全くありません!実は娘さんがジュエラーという事で、ケースへのセッティングは娘さんが行ったそうです。かなりの腕も持ち主だと思います。
ダイヤモンドセッティングされたチタンのフォールディングバックル

 そして、この時計の話を来場者の方と話していたフロリアン氏は、「その時計見せて?」と来場者の方のフランクミュラー(トゥールビヨン)を手に取り、シリアル番号を調べ始めました。

某氏のショットからの写真
「これは僕が作った時計だよ!」と満面の笑み。それにはこの場にいた人達が全員驚きの表情で「なんというめぐり合わせ!」。
 そう、彼は父の親友であるフランク・ミュラーにて働いていたのです。そして彼がフランク時代に作った数々の時計とそのエピソードを教えてもらいました。

そんな彼がお勧めする時計がこちら。
そう懐中時計。裏を見ると、


 何とも美しい装飾。
ジュネーブは時計宝飾の町として栄えた都市であり、貴族が贅を尽くした作らせた時計の多くはジュネーブ製であったという。そんな16世紀を思い起こさせる伝統と技術が詰まった逸品をユニークピースとしてファミリー全員で作り上げたのです。氏はジュネーブに工房を構える独立時計師。
これぞ伝統的なジュネーブウォッチである。


ジュネーブシール

 最後に。アントワーヌ氏が自身の腕につけていた時計を。
Tourbillon of tourbillons

 直径45㎜、厚さ14㎜のケースの中に1分間トゥールビヨンが3つ配されており、それが文字盤上を10分で1回転する。お互いに回転しながら共振しているため、精度は非常に良いという。
 設計開発に長らく時間がかかったこの作品だが、氏いわく、「どうしても作りたかった。」、と言う。
「2つのトゥールビヨンは、誰かが作ると思っていた。だから3つに挑戦したかった。」。続けて「僕にとってこの3つは、情熱(Passion)・忍耐(Patience)・粘り強さ(Perseverance)だったね。」と嬉しそうに話してくれました。
 この時計、2015年にジュネーブで同時に賞を2つ取っている。1つのコンテストで賞を2つ獲得すること自体が信じがたいのだが、この説明を聞いて初めてこの作品の素晴らしさと難しさ、そして彼の3つの精神を形に表したものだと納得しました。それが評価されたことは当然でしょう。



 表からも裏からも見ごたえ十分のケースいっぱいのムーブメントが、この時計の美しさを引き立てているのですが、その反面、この大きさにならざるを得なかった複雑さも表しています。見事としか言いようがない。
 視認性は決して悪くなく、ADLCによるスティール&チタンとゴールドのケースは、大きさと軽さのバランスをうまく組み込み、重心を考慮してかラグの先端から延びるストラップは装着感は非常に良い。

ケースサイドとダイアルにブラックダイヤモンドがセッティングされているが、今回も家族共同作業で作製した作品だという。



アントワーヌ氏とフロリアン氏
独立時計師アントワーヌ・プレジウソ。ジュネーブをいや世界を代表する時計師とそのファミリーが作り出すこれらの時計は、伝統を受け継ぎながら革新を取り入れ次世代へ継承していく。
 
 大企業が作る時計も決して悪くないが、自分の意思をそのまま作品として表現できるのは独立時計師だから出来るのです。
 彼らが作り出すものはもはや商品ではなく、作品であり芸術品なのです。それを改めて実感できた1日でした。

【商品提供】
ステラ・ポラーレ
https://stella-polare.co.jp/contents/collection/01menu.html



































 



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